あやかし螺紋35 「螺紋仙女VS鼈甲青女―および、“ゲニウス・ロキ”をめぐって」
2008年2月25日 13:47
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セミが大合唱をはじめた放課後の屋上―
あやかし少女神楽、最終戦の為、夕子、螺紋、カレン、ユイ、ケイ、キキ、ミドリが集まっていた。
ユイ(―髪型を変えた)とケイは、現われたカレンの格好に唖然とした。
白と青、亀の甲羅の多角形をモチーフにしたドレス、アクセサリーにハートのステッキ―
すべて、カレンがデザインし、オーダーメイドした、魔法少女風のコスプレだった。
「きゃー!いいなぁ~」 「萌え~、ですわ」――キキとミドリは絶賛だった。
「今日はよろしくおねがいします♡」―コスプレの披露を心から楽しんでいる様子のカレン。
その横に青いゾウガメ、カレンの護霊獣、「アオキさん」が眠たそうに佇んでいる。
なんとも暢気で滑稽な場で、夕子の表情は硬い。
「それではみなさま、螺紋仙女対鼈甲青女の、戦いの舞台へと移動致します」
めがねっこ天狗、ミドリが白団扇を振りかぶった。――
矜迦里駅近くのカフェに、不動マキはいた。学園でのおさげの変装ではない、素の姿である。
(ゆっこちゃんの戦いが始まってる頃だわ・・・)
蜂矢夕子には勝ってもらいたかった。自分が稽古つけた相手であるし、彼女が好きだった。
(でも・・・、金剛寺カレンが相手では・・・)
マキはカレンの能力を、幻視省のデーターベースの検索で調べ上げていた。
(ゆっこちゃんは、勝てない・・・)
―マキは集中を今の議題に戻した。
カフェには怪事官の同僚、城戸ミシェルと、新垣ケイの祖母、新垣とみが同席していた。
この席では、まず、とみが夢で会った「神」について話された。
ユタ―沖縄地方でいう巫女であるとみは、重篤の病に臥していたが、夢の中で出会った
神によって健康を回復し、孫のケイの元へやって来たのだった。
とみはその神を、ケイを導いた「矜迦里権現」であると思っていたのだが
こちらに来て、それが違ったのではないかと感じ、得体の知れぬ不安を覚えた。
ケイから怪事官の存在を聞き、この事を話そうと、今日の会合となった。
とみが夢で観た存在は、矜迦里権現の姿とは附合しなかった。
女と蛇、そして四足の獣。異形の気を放っていた。
その話をふまえ、怪事官二人が追う人外の気、(―その一つはリンのものだった―)が
とみの夢に関係しているのではないかと、マキは考えた。
それが何者か、とみの病を治したのはなぜか、「あやかし少女神楽」に、どう関係しているのか。
ミシェルはカバンから、ひもでふたを結われた長方形の木箱を取り出し、テーブルにのせた。
「ミシェル、それは?」ーマキが訊ねた。
ひもを解き、紫のふくさの包みを開くと、現われたのは縦に20センチほどの、巻物であった。
「これは『矜迦里山縁起絵巻』というもののレプリカです」
ミシェルは答えていった。
「本物は8世紀から10世紀の間に書かれたという、国宝に指定された絵巻物です」
「ほえ~」―とみは興味深そうに身を乗り出した。
「僕は今回の諸々の事件が、ゲニウス・ロキ、つまり土地の神が中心の存在となって
起きていると感じていました」
「土地の神って、矜迦里権現のことよね」―マキが言う。
「ええ。そこで、この『矜迦里山縁起絵巻』を紐解く事になりました。
これにはこの土地の神の座を争うものたちの姿が描かれているのです」―ミシェルが答える。
「むかぁしむかし、土地の覇権をめぐり、神々の戦いがあったのね」―と冗談めかしにマキが言う。
「そう、二人の神と、一人の超人の戦いが・・・」ミシェルは巻物を広げた。
