あやかし螺紋33 「水晶は少女の夢をみる」
2008年2月4日 17:09
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水晶―石英という鉱物の、六角柱状の結晶。
それは水晶と、同じ形をしているが、水晶ではない。
それは生き物である。
それは宇宙からやって来た。
それは地中に埋もれていることが多い。
それは、長命である。不死であるというものもいる。
それは、夢をみる。
それは夢みたものを実体化できる。
それが人間をモデルにして、夢をみる時
夢みられたもの、生まれたものを
「水晶人」―「クリスタライン」とよぶ。
光が消えていく。
ひとつの気の急激な減少を感じ、ユイたちは眼を開けた。
「ああ!!」ユイは声をあげた。
そこには螺紋と、異様な姿のリンが立っていた。
「きゃあ!!ヒビがはいってる!!」キキが叫んだ。
―左半身に大きく亀裂を走らせた月宮リン。足元には同じく亀裂が入った水晶が―
立っているのがやっと、戦闘不能なのは明らかだ。
「ユイさん・・・、あのひとは一体・・・」ケイが訊く。
「クリスタライン・・・」ユイがつぶやいた。みるのは初めてだ。
夕子は知っていた。ミシェルから聞かされていた。リンがクリスタラインであることを。
最初の猫パンチが効かなかったのは、リンの肉体の方を打ったからだった。
リンは夢みられたものだった。肉体も夢だった。
ニ撃目の猫パンチは、夢みるほうの、水晶剣を打った。
中指の第二関節に、すべての力を集中して。
結果、リンの存在の根源といえる、生ける水晶は砕け、勝敗は決した。
「勝負あり!螺紋仙女の勝利です!!」ミドリが、白団扇を振り下ろした。
全員が、闘仙境から、学園の屋上に戻っていた。
夕子もリンも、元の、戦う前の姿に戻っていた。疲労も一切ない。
リンは珍しい水晶人だった。夢みる本体、親ともいうべき水晶を、
剣という武器にして戦う―多くのクリスタラインが、自分が水晶の夢から
生まれたことすら知らずにいるのに。
そうしたことを夕子は、ミシェルから聞かされていたのだった。
夕子はリンに歩み寄り、言った。
「どうして、ミシェル君に、自分のことを話させたの?」
―あの「幽霊屋敷」の前に立った日から、わかっていた。
リンが自分の正体を、ミシェルに話させたのだ。
水晶剣がいわば、彼女の本体であることを知らなければ、夕子は勝てなかっただろう。
「・・・フェアじゃないでしょ。私のような怪物が相手では」
リンが言った。そして踵を返した。
「そんな・・・」夕子は何かを言いたかった。でもその何かがみつからなかった。
ユイ、ケイ、キキが夕子の元へ来た。
「見事です。ゆっこ姉(ネエ)」―ケイが祝福する。
「おつかれゆっこ!ああ、疲れてないか・・・」―キキが笑う。
「まさかクリスタラインとはね・・・。大丈夫なの?あいつ・・・」―とユイ。
―ユイは人間でないリンを警戒していた。
「大丈夫よ、あのひとは」夕子は答えた。
(だって、音楽室で、カナのためにわたしを叱ってくれたじゃない・・・)
夕子は歩み去るリンに心の中で話しかけた。
(あなたは友達のために怒ってくれた。自分が不利になるようなことも伝えてくれた・・・
そのこと、忘れません)
夕子の眼に涙があふれた。月宮リンと、笑いあえる日が来ることを信じていた。
(おもしろいわね、蜂矢夕子・・・)
それは、すべてを観ていた・・・。
