あやかし螺紋32 「眠るように猫パンチ」
2008年1月30日 11:59
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「まぶしいよう!ユイ、サングラス買ってきて!!」
キキが喚くのを無視して
「気配を感じるのよ、ケイ」―ユイが眼を閉じながら言う。
「はい」―ケイが答える。
まばゆい光の玉が螺紋の周りに輝く壁をつくる。
その中で螺紋もやはり、眼を閉じていた。
ゆるやかに構え、緊張を和らげ、精神を統一する。
視覚を捨て、聴覚と気の動きでリンを捉えようとする。
―刹那、それは来た。
猛禽の速さで、水晶剣の上段からの切り落とし。迎えるは気功の拳、猫パンチ。
骨が砕ける音。
剣は螺紋の左肩を砕き、拳はリンの顎を捉えた。
螺紋の気が、リンを昏倒させるはずだった。
しかしリンは倒れず、光の壁の向こうに消えた。―猫パンチが効いていない。
(やっぱり、ミシェル君の言うことが・・・)
痛覚を遮断し、再び迎撃の構えを取る。左腕はもう使えない。
―白い光の世界で、螺紋―夕子は待った。
時が流れた。静かに。
光の照射は、時間の感覚を狂わせる。1分たったのか、10分なのか。
死闘の中、夕子の心は穏やかだ。
自分のまぶたの裏が赤い。血液の色だろう。
夕子は夕焼けのあかい空をおもいだした。
幼いころ、夕映えの土手の道を、兄と歩いた。
土手を降りるころ、世界は青く染まり、家々に灯りがともり始める。
そんな時間が、夕子にはたまらなく愛おしい・・・・・・
―戦いのさなかに、追憶など!
―刹那、二つの影が交錯した。
何かが砕けた。
