あやかし螺紋29 マダラ編 「トゥ・レイト」
2008年1月13日 11:23
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夕子は一人、放課後の教室にたたずんでいた。
カナを傷つけてしまった事がショックだった。
あやまらなくては・・・そして、自分のことを話そう。
過去も兄の事も、今関っている奇妙な祭りの事も。
おかしい子に思われるかもしれないけど。嫌われるかもしれないけど。
「ゆっこちゃん」―教室に二人の男女が入ってきた。
妖異な事件を調査する秘密のエージェント、「怪事官」石動マキ。そして横には――
金髪に碧眼、すらりと高い身長に甘い面差し。そして、なぜか冬服のまま―。
「城戸ミシェルくんよ。わたしの仲間」―と、いうことは、怪事官・・・。
数日前から、女子が騒いでいたのは、彼が転校生として来たからかと、夕子は納得した。
「よろしく」静かな優しい声で、夕子に握手を求めてくるミシェル。
その手を握り返そうと手を伸ばす。なんだかドキドキする。しかし、彼の手の異様な冷たさが
夕子の心を醒めさせた。
「ゆっこちゃん、あのね、」マキが話し始めた所で―「マキさん、ごめんなさい」
「わたし、緊急の用があるので、話しは又にしてもらえませんか」
夕子は二人におじぎをして教室を出る。―カナと話さなければ・・・。
「ちょっと!」マキが引き止める。
「月宮リンに気をつけて!」そう、声をかけた
・・・二人残された教室で「ふられたわね」とマキ。・・・ミシェルはただ、微笑むだけだった。
まだ間に合うはず・・・カナを追って走る夕子の耳に音楽が聴こえてくる。
そこにはカナと、別の誰かの歌声とピアノの音があった。夕子は音をたどった。
音楽が鳴る教室をのぞくと、そこにはカナと、見知らぬ女の子と、月宮リンの姿が。
(――リンに気をつけて!)さっきかけられた言葉が、夕子の頭に走った。
夕子の体に、ギリッと、怒りの気が満ちた。リンの存在と、自分のいない所で、カナの楽しそうな姿。
ズカズカと教室に入る。音楽が止む。カナの手首をつかんで、リンから、ピアノから引き離す。
「ゆっこ!?―痛い!」カナが叫ぶ。それでも夕子はカナを連れ出そうとする。強い力だった。
「放して!放してよ!」カナは右腕を振り、夕子の摑んでいた手をはずす。
―パチン。夕子の頬が鳴った。カナの平手打ちだった。
「一体なんなの!?・・ゆっこは・・・」言葉は途切れた。
カナは泣いていた。そして、夕子をみつめ、言葉を待っていた。―言葉はない。
カナは鞄をつかんで、教室を駆け出していった。涙の粒が舞うのを、夕子は見た。
打たれた頬をおさえ、夕子は呆然としていた。そこにリンの静かな声がながれた。
「友だちを泣かせてはいけないわね」
ふたたび夕子に怒りが満ちた。リンを睨み付けた。リンは立ち上がり、視線を受け止めた。
(ゆっこ!おちついて!)頭のなかで螺紋の声がしたが、無視をした。
「次はあなたよ・・・」あやかし少女神楽の事だった。「次はあなたと戦う」夕子は言った。
「いいわ」―リンは答えた。
斑野舞は微笑んでいた。悪魔の微笑だった。そしてつぶやいた。
(イッツ・トゥ・レイト)
遅すぎたわ
