あやかし螺紋27 「謎とおばぁと泣き虫ゆっこ」
2007年12月19日 13:09
994
12
闘仙境から、学園の校舎の屋上に戻ってきた。
闘いの負傷も疲労も消えている。
わたしと猫螺紋、ケイとキキ、そして、ミドリさん……。
ケイとわたしは、無言で数秒、見つめ合い、抱き合った。
二人とも泣いていた。キキも泣いた。
少しの間の後、キキが叫んだ。
「あ!おばぁだ!!」
キキが指差すほうへ二人で向くと、そこには「おばぁ」らしき人とユイとシロタンが
こちらに向かって歩いてくる。―あの人が「おばぁ」…でも、病気なのでは…?
ケイは駆け出した。「おばぁ!!」
ケイとキキは「おばぁ」に抱きついた。
歩み寄ってきたユイにどういうことか聞いた。
「イヤァ、あんたたちの闘いが気になっちゃって…。ガッコウに残ってたら、あのおばあさんが
『もしかして、狗道ユイさん?』って訊いてきて。こっちも、どなた様ですかって訊いたら
ケイのおばぁさんだって言うから、ここに連れてきたの」
ユイはさらにどうして自分が狗道ユイだとわかったのかとたずねると
「白い犬の霊獣を連れている」とケイから電話で聞かされていたのだそうだ。
―常人では観えないシロタンが観えるということは、…あの人も霊能力者……
ケイたちのところへユイとちかづくと、話し声が聞こえてきた。
「おばぁ、からだは大丈夫なの!?」とケイ。
「すっかり、なおしてもらったさー」とおばぁ。
「なおしてもらったって!?誰に!?」
「おととい、夢の中に出てきた、恐ろしげなカミさまさー。『孫のところへ行きたくないのか?』って
訊いてきたんで、『病気なんで、行きたいですけど行けません』って言ったら
『もう、治っている』って言って、消えていったんさー」
「それで、ほんとに病気は…」―ケイの消え入りそうな声…。
「検査したら、完治の状態だって、お医者さんも驚いてたよー」
「おばぁ!!」もう一度、二人は抱きしめあう。キキも、おばぁの頭を抱きしめた。
…恐ろしげな神…矜迦里権現の事なのだろう。
粋なことをする!―おかげで胸が軽くなった。ミドリさんの方へ顔を向ける。
すると彼女は、なにやら、怪訝そうな表情をしていた。腑に落ちないというような…
「ゆっこ…どうなった?…勝負は…」ユイが珍しく神妙な様子で話しかけてきた。
「うん…勝ったけど……」自分の情けなさが思い出されて、顔が熱くなる。
「苦戦したんだ…。ごめん、あたし、ケイに土下座して頼まれて、「咬犬破」教えちゃったから…。
―ミドリッちもいいっていったからさぁ」―ユイは両手を合わせて謝ってきた。
わたしは全然かまわないと答えると、「余裕だなあ!こいつう!」とユイが両ほっぺをつねってきた。
ケイはミドリさんに何度も頭を下げて、「祖母の体を治して頂いてありがとうございます」
と感謝の意を表していたが、ミドリさんはあいまいに笑うばかりで、やはり何か変だった。
ケイはおばぁとわたしたちを改めて引き合わせた。
「わたしの祖母でユタ―沖縄のシャーマン―であり島唄の師匠でもある「新垣とみ」です」
おばぁ―とみさんは帽子を脱いで「ケイがお世話になっております」と深く頭をさげた。
「いえいえこちらこそ。蜂矢夕子と申します。この黒猫は螺紋といいます」
「ケイから聞いとります。この子の事、よろしくお願いいたします」
とみさんはユイとわたしにまた、頭を下げた。
「おばぁ、負けちゃった。ゆっこさん、とっても強いんだよ」とケイがいう。わたしは恐縮する。
「そうかい。残念だったねー。でもよかったさー…」そういってとみさんはユイとわたしを見て
「優しいお姉さんが二人、できたさー」とケイに言った。
「うん!」ケイはうれしそうに答えた。
ユイは恥ずかしそうに、はにかんだ。
わたしはまた、泣いてしまった。
「泣き虫ゆっこ、また泣いてる」―螺紋はあきれた調子で言う。
「よしよし。ゆっこはいい子」―キキがわたしの頭をナデナデしてくれる。
夕暮れは青く、世界を染めていった。
