あやかし螺紋49 「分断、あやかし少女―助っ人参上」
2008年7月18日 14:22
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ひんやりと涼しい、マダラの地下世界を、夕子たちは歩んでいた。
かがり火が灯す道を、ハナを先頭にして進んで行く。
ハナは、記憶にある道筋と同じかどうか、検証しながら、皆を先導している。
夕子は緊張の虜だった。ここは敵の腹の中なのだ。
カナたちが無事かどうかも、心を重くする。
斑野舞―マダラの主という敵の攻略法も見出せず、仲間も捕らえられ、何の策も無いまま
暗い岩壁の道を、進まねばならない。
(わたしたちをこの地下に生き埋めにさせる気だったら・・・)
(人質と引き換えに、お前の命を差し出せと言ってきたら・・・)
(斑野舞に、自分の力が全く及ばなかったら・・・)
不安が、夕子の胸を締め付ける。
夕子の肩に、リンの手が置かれる。
「大丈夫、相手は極端な手は打ってこない。カナさんもカレンちゃんたちも無事よ」
リンが言った。
「リンさん・・・」―自分を気遣っての言葉に、夕子は微笑を返す。
「なんでそこまで言い切れんのよ、リン」
ユイが率直に聞くと、「勘よ」と、リンは返した。
そのとき、ハナに異変が起きた。
「ハル・・・カレンちゃん・・・、急がなきゃあ・・・」
ぶつぶつと言い始めたかと思うと、いきなり、ダッシュで駆け出した。
「ハナ!待って!」―夕子の制止も聞かず、ハナは走って行ってしまった。
「ヨミの精神操作よ」―リンが言う。マダラの主が背中に飼う蛇、「ヨミ」は、人の心を読み、操る
力を持つ。修行した夕子たちには通用しなくても、ハナには作用した。
「わたしたちが捕まえます!」―ケイが走り出す。キキも続いた。
「ケイ、キキちゃん!」
「ケイたちに任せよう、ゆっこ」―ユイが夕子に言った。
その時、背後に気配を感じて、夕子、ユイ、リンの三人は振り向いた。
妖気を放つもの、八体。
斑野舞が冥府―根(ね)の国より呼び出した魔獣たちであった。
あるものは羽音を響かせ、あるものはのそのそと、またあるものは牙を鳴らしながら
三人へと近づいてくる。
「わたしに任せて、先を行って」―リンは二人に言った。
リンが水晶剣を構えると、彼女の体が青い光を放ち始める。
「行きなさい。振り返らないで。目をやられるから」
城戸ミシェルは図書室にいた。地下への入り口の前に立っていた。
右手に黒いカバンを提げている。
「お待たせしました、先輩」
ミシェルが、カバンに向けて言った。
そのカバンのジッパーを、何か尖ったものが内側から押し開いてゆく。
「ムギィ―!」
何かが叫んで、カバンから飛び出した!
頭に一本の角。白いぬいぐるみのような柔毛のからだ。丸い手足。
この奇妙な生き物こそ、「助っ人」であった。
その名は「ムギィ」
幻視省「失踪人調査」担当怪事官、ミシェルとマキの同僚であり、先輩である。
