はてしない物語より 〜ファンタージエン国の危機〜 その1
2008年6月29日 22:17
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ハウレの森は真夜中だった。
と、かすかな光の塊が木々の間をジグザグにかすめてとび、ここ、あそこで、
ふるえながら止まったかと思うと、枝の上に舞い上がり、すぐまた先を急いでいった。
この光を放つ玉は手まりほどの大きさで、高くはねてはときどき地面にふれ、
またふわりと浮き上がった。だが、まりではなかった。
それは鬼火(おにび)だった。惑わし火ともいわれる鬼火が、道に迷ってしまったのだ。
惑わされた惑わし火というわけだ。そんなことはファンタージエン国でさえ、ずいぶん珍しいことで、
ふつうなら、他の者を惑わして道を迷わせるのこそ鬼火だった。
丸い光の中に、小さくてとてもすばしこいものの姿が見えた。それが力の限りとんだり走ったりしているのだ。
男でも女でもない。そういう区別は鬼火族にはなかった。
右手に持った小さな白い旗が後ろへはためいていた。何かの使節か代表者なのだろう。
鬼火は信じられないほど器用で身が軽いので、暗闇の中で高くとびあがっても、
木の幹にぶつかる危険はない。とびはねる途中で方向を変えることさえできた。
だからジグザグのコースをとることになるわけだが、そうしながらもずっと一定の方向をさして進んでいた。
参考文献「はてしない物語」ミヒャエル・エンデ作 上田真而子/佐藤真理子訳 岩波書店
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