あやかし螺紋45 「カレン速攻」
2008年6月1日 06:00
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カナ失踪の翌朝―
金剛寺カレンの邸には、カナが手にしたあの「黒い本」が届けられていた。
蛾妖子が運んだものである。
本にはメモ用紙がはさまれていた。
カレンは学園に向かった。
カレンが通う矜迦里学園の校舎内に、二人の女性の不審者がうろついていた。
ふくよかで茶髪、みずいろのTシャツを着ているのがハル、めがねにピンクのTシャツがハナである。
かつては悪の組織の戦闘員、今はコンビの芸人をしている。
「やっぱりヤバいんじゃない?勝手に学校に入っちゃあ・・・」―とハナ。
「ニャーゴさまの為だよ。ハナ」―ハルが答える。
以前、学園を訪れたときに、この地を覆う妖気に気づき、調査をしに来たのだった。
学園の生徒であり、自分たちの上司だった蜂矢夕子の役に立ちたいと思っての行動だった。
この二人はまだ、マダラの主の存在を知らない。
「あ、あれカレンちゃんじゃない?」―ハルが小さく声をあげる。
そろそろ一時限目の授業が始まるという時間、校舎の一階の廊下で、カレンの後ろ姿を観止めた。
10メートルほど離れた先に図書室へ向かう金髪の少女が歩いて行く。
カレンには先日、夕子とともに、おいしいお茶とお菓子をごちそうになった。
二人は忍足の小走りで彼女を追う。
カレンはカナがしたように、黒い本の開錠によって、隠された場所への扉を開けた。
(学園の地下に、こんな場所が・・・)
石の階段がありそれを降りると、その先には鍾乳洞のような、石の空間があった。
かつてマダラの主が封印されたのは、この学園に当たる場所ではないかという
城戸ミシェルの推論があったのだが、そこがそのまま、斑野舞の棲家となっていたのか。
「ふえー、ダンジョンだよ、ハナ!ダンジョン!」
声がして、カナは振り向いた。階段を降りてくるハルとハナの姿が。
「ハルさん!ハナさん!・・・どうして!?」
「いやぁ、ニャーゴさまのお役に立とうと・・・」―とハナ。
危険だから帰ってと言っても、二人は訊かなかった。
ニャーゴさまの御友人を、放っておけないというのである。
帯同を許したのは、カレン自身、心細い所があったからか。
三人は広大な地下迷宮を、かがり火を道しるべに進んだ。
石灰の盛り上がりで出来た石筍や水路、見たこともない生き物を横目に
警戒しながらの道行きとなった。どれだけの時間が経ったのか、どの方角へ向かっているのか
そうした感覚が失われて行く・・・。悪夢の中にいるようだと、カレンは感じた。
そして三人は今までの空間とは異質の、構築された広間に出た。
高く造られた場所に、三人の女がいた。
「ようこそ、金剛寺カレンさん、後ろのお二人は、ハルさんとハナさんね」
「斑野舞・・・いや、・・・マダラの主」
カレンは敵を見上げた。横の二人は・・・?
「こちらは榊綾音さんと琴音さん。ご存知かしら」―と、舞。
「名前はだけは。優秀なモンスター・トラッカー(怪物捕獲師)と訊いているわ。
・・・ただ、ずいぶんお金に汚いとも・・・」―カレンは言う。
「わあ、ひどい言われようよ、姉さん」―茶髪の方、妹の琴音が冗談めかしに嘆く。
姉、綾音は無言だった。
「カナさんを還しなさい。そしてゆっこさまから手を引くのよ」
カレンは命令するように告げる。
ハルとハナはカレンの度胸に感服した。目前の三人、とくに真ん中の背の高い女の脅威を
二人は感じ取っていた。かつての自分たちの頭領、フリーズ将軍に匹敵するか、それ以上の強さ―。
斑野舞はゆったりと階段を下りていく。そして言った。
「メモに書いたとおり、わたしに指の先でも触れられたら、あなたの言うなりになってあげる
―うしろの姉妹は手出ししないわ」
「それはどうも。触れると言わず、ボコボコにしてさしあげます」
カレンは答えた。闘気が満ちる。ヨミという蛇の読心能力を使って敵の動きを読むのが
マダラの戦法であると見ていた。
そうであっても、自信はあった。心を読まれても、それを動きに反映させるのにはタイム・ラグが
ある筈だ。アオキさんグレートのスピードなら、それを上回れる。
敵がそれ以上の速さをもっていたなら・・・、その時はその時、バリアーで身を守りながら
次の手を打とう。
あやかし少女神楽では、相手が夕子と云う事で、遠慮が僅かながら、あった。
しかし今回は全力で戦う。触れるぐらい、相手が亜神といえどできるはず―。
斑野舞は階段を下りきった。カレンとの距離は4メートルほど。
「さあ、いつでもどうぞ」―戦闘開始だった。カレンが少しでも触れれば勝ち。
「グレート!」
―カレンの叫びとともに守護霊獣、アオキさんグレートがあらわれた。
同時にカレンとハル、ハナの三人を青いバリアーが包む。
渾身の力を込めた、超速の拳が斑野舞を襲った。
